そうだ。

私と慈英の恋は始まったばかりだ。

私達なりの恋を作ればいい。

過去の女とは別物の恋を、慈英と2人で作ればいいだけだ。


「それと…………。」

「心菜、何?」

「猫とか被る必要ないから。」

「…………。」

「確かに勝手なイメージを作り上げてた。だからイメージも作り直したい。」

「心菜は?被ってない?」

「たぶん。」


多分被ってない。

いつも『ありのままの私』だったような気もする。


「やっぱり最高だな、心菜は。」

「えっ?」

「明日はバイト?」

「ごめん、ない。」

「あー、会えない?」

「うん。」

「会いたい。」

「副社長は忙しいでしょ?またカフェに来て。」

「…………もっと進展させたい。」


慈英の呟きが聞こえたがスルーした。

慈英の行動力は凄いから、進展するのも先の話ではないだろう。


「おやすみ、慈英。」

「…………おやすみ、心菜。これも…………。」


最後の言葉は聞こえなかった。

電話を切って、部屋のベッドに凭れて目を閉じた。


『過去に嫉妬?』


慈英の言葉が頭をよぎる。

嫉妬となれば、慈英を好きになっている事になる。


「そうなのかな?」


独り言が小さく漏れた。

確かに惹かれ始めてる。

自覚はある。

今日も一方的に怒ってしまったが、慈英はちゃんと向き合ってくれようとしてくれた。


『好きだ。』


慈英の言葉に、自然と笑みが浮かんでしまう。

やっぱり嬉しい言葉だ。


「好き…………か。」


いつかは言える日が来るだろうか。

いつも気持ちを伝えてくれる慈英に、私も伝えれる日が来るだろうか。


『この先は2人で作り上げていこう』


と決意した。