どれも特別な事ではない。

他の女性にも当てはまる事ばかりだ。


「俺は心菜を何ヶ月も見てきた。」

「カフェだけでしょ。」

「それでも他の女は目に入らない。心菜が欲しくて堪らなかった。」


さっきまでの強気の慈英ではなくなっていた。

声が小さくなっていくのが分かる。


「慈英?」

「どう伝えたら、心菜に伝わる?」

「…………。」

「俺の心菜への想いをどう伝えればいい?」

「…………。」

「心菜が好きだ。好きで堪らない。だから……これからの俺を信じて欲しい。」


慈英の言葉が胸に突き刺さる。


『これからの俺…………』


過去に拘りすぎて、こんなにも慈英を苦しめている事に気付いた。

過去を知りたい気持ちは消せない。

だけど知られたくない過去もあるだろう。

きっと私にもある。


「慈英。」

「ん?」

「知られたくない過去の一つぐらい、誰にでもあるよね?」

「…………。」

「ごめんね、過去の事が気になって仕方なかった。」

「それって、嫉妬してくれてる?」

「…………かな?」


それもあるのかな?

でも慈英が言うように、『これからの俺』を見ていこうと思う。

これから先、私達がどうなるかは分からない。

だから私も『これからの2人』を作っていこうと思えた。