綺麗にセットされた黒髪、綺麗な顔立ち、ジムに通う彼はスタイルも抜群だ。

家とは違う慈英が大勢の新入社員の前で話していた。


「以上。これから宜しくお願いします。」


慈英の挨拶に誰もが聞き入っていた。

朝、不貞腐れていた慈英はいない。

私の知っている顔とは別人だった。

若き副社長、独身で女性なんて選び放題だろう。

そんな彼の彼女だという事が信じられなくなってくる。


「これで入社式は終わります。続きまして、新人研修などの話に移りたいと思います。」


壇上の役員達が退席していく後ろ姿が目に入る。

もちろん、副社長である慈英も席を立ち、この場から退席していった。

私と副社長である慈英との距離が凄く遠い存在に感じた。

新入社員と副社長…………

今の私と慈英の立場の違いを感じていた。

これから私と慈英が会社で顔を合わせる日はないだろう。

下っ端の私、大企業を引っ張っていく副社長。

雲泥の差だ。