満足そうに去っていく賢の後ろ姿を目で追い掛けた。

今度は恵さんの所に向かっている。

あの二人にも宣戦布告か?


「簡単に運命なんて落ちてないよ、賢。」

「そうだな。」


私の呟きに慈英が反応した。

見上げれば、じっと見つめられている。


「いつか賢にも運命の出逢いが訪れると良いな。」

「うん。」

「明日かもしれないし、数年後かもしれない。」

「うん。」

「もしかして出逢いなんてないかもしれない。」

「…………。」

「けど、俺達はありふれた場所で出逢えたんだ。」

「そうだね。」


慈英から招待客へ視線を向けた。

各々が色々な出逢いをしている。

私と慈英が出逢ったのはバイト先であったカフェで、私にとっては日常の場所だった。

そこに現れたのはビジネススーツを着こなした慈英だった。

その彼が私だけを一途に想い続けてくれる奇跡に感謝している。


「慈英、ずっとずっと私だけを愛してくれる?」

「心菜も…………ずっと俺だけを愛してくれ。」

「うん。」

「俺は心菜だけを愛していくと誓う。」


最高の笑顔が向けられる。

肩を抱き寄せる慈英に凭れて、ウエディングドレスを身に纏う私は誰よりも幸せに見えていたに違いない。


『慈英、ありがとう』


恋を始めてくれた慈英に感謝した。



【Fin】