慈英が私の頭を撫でる仕草に顔を上げた。


「夫婦二人三脚で乗り切っていくぞ。」

「うん。」

「俺達は夫婦だろ。頑張れるよな?」

「うん。」


夫婦…………私と慈英は四月に予定通り入籍を済ませた。

まだ指には結婚指輪はない。

だが仕事では岬心菜を名乗るように言われ、社員証も岬心菜に変わっている。


「結婚指輪を取りに行くか?」

「うん。」


二人で帰る約束をした理由は結婚指輪を取りに行くからだ。

二人で決めた結婚指輪。

慈英も意見を言ってくれたのは嬉しかった。


「それにしても…………普通の家柄の私より、バツイチの武内さんの方が問題なんですか?」

「同じ事を繰り返されるのを危惧したんだろ。それに恵の家柄目当てかもしれないとか、嫁より婿を受け入れる方が大変なんだろ。」

「そういうもの。」

「親父達にとって恵は可愛い娘だし、岬の婿としてバツイチは少し抵抗があるんだろ。」

「ふーん、そっか。」


二人の問題は武内さんの離婚歴だったらしい。

それを何とか二人で乗り越えての結婚だ。

条件は武内さんの数年間の海外修行だ。

お互いに離れても思い合えるのかを確認したいのかもしれない。


「心菜、行くぞ。」

「うん。」


もうすぐ結婚式だ。

私の指には二人で選んだ結婚指輪が嵌められる。


「楽しみだな、心菜。」

「うん。」


私達の結婚式が近づいていた。