カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する

大きく深呼吸を吐き出す。


「お疲れ、心菜。」

「賢。」

「俺ら同期が話し掛けるタイミングもないぐらいだったな。」

「うーん、ごめん。」

「また飲みに誘うから来いよ。」

「うん。」


隣には慈英ではなく賢が立っている。

クリスマスイベントも無事に終了した今、慈英は両親に話があるようで歩いて行った。

私は『待ってて』と言われて、ここで慈英を待っている。


「もう帰るのか?」

「うん。会場はホテル側にお任せだから。」

「なら俺も。」

「一緒にマンションへ来るの?」

「ダメか?」

「慈英が良ければ大丈夫だよ。」


賢と話していれば、慈英が戻ってくる姿が目に入ってきた。

腕で賢を突っつく。


「お待たせ、心菜。」

「兄貴、俺もマンションへ行っても平気か?」

「マンション?今日は帰らない。」

「…………はっ?」


私も賢も驚きに慈英をガン見したのは言うまでもない。


「ここに泊まる。」

「はっ?俺は?」

「寂しいなら女でも誘え。心菜と俺は二人だけでクリスマスを過ごしたいから邪魔するな。」

「はあ?二年も一緒に過ごしてて、まだ足りないのかよ。」

「足りない。賢、お前は帰れよ。」


私の手を繋いで歩き始めた慈英に、引っ張られるように私も歩くしかなかった。

ちらっと振り返って賢には手を振っておいた。

見た目から不貞腐れている。

それでも歩みを止めない慈英と会場を出て行った。