課長がクスリと笑う声に我に返った。


「楽しい思い出だ。まさか副社長みたいな方が仕事中に会いに行ってるとは思いもしなかったから。」

「すみません。」


つい謝ってしまった。

さらに笑う課長に恥ずかしさから頬が染まってしまう。


「雨宮が入社するまで続いてたからね。早く会ってみたくなったよ、副社長の彼女に。」

「…………。」

「まさか副社長秘書にするとは思ってもいなかったが。」

「ですよね。」

「雨宮は幸せになれる。副社長が就任してから見てきたが、雨宮の為なら何でもこなしてくれる。」

「…………。」

「だからと言って仕事も手を抜いてない。逆に高めていっているから凄いよ、副社長は。」


慈英を褒められて嬉しいのが顔に出ていたようだ。


「雨宮のウエディング姿は綺麗だろうな。」

「えっ？」

「幸せそうだから。」

「あっ、いえ、普通ですよ。」

「いや、俺の経験からして…………花嫁は絶対に綺麗だ。」

「…………。」


なんか照れてしまう。

『花嫁』って言葉に意識してしまう。


「雨宮、時間だ。」

「あっ、はい。」


違う世界に飛びそうだった私は現実に引き戻された。

これからがフィアンセとしての第一歩だ。

自分の心に気合いを入れ直した。