緊張を堪える体に力が入る。


「皆様には申し上げておりませんでしたが…………。」

「…………。」

「慈英と心菜さんは一緒に暮らしております。賢も慈英の弟、そして心菜さんの同期であり仲良くしております。」


頷きながら話を聞く役員の方々。

表情は思った以上に固い。


「同棲に関しましては、『2人が結婚する予定だ』と聞いておりましたし、反対する理由もなく許可しました。」

「…………。」

「しかし今回の件で反省もしております。そこで提案があります。」


社長の言葉だけが響く。

誰も口を開こうとはしない。


「しばらく2人の同棲は解消し、賢もマンションへ通うのは禁じる。」


社長の言葉に慈英がソファーから立ち上がった。

私も賢も社長をじっと見つめた。


「解消?俺は納得できない。俺と心菜は婚約してるし、問題はない筈だ。」

「慈英、それはミサキ商事の副社長としても同じ言葉が言えるのか?」


社長の聞いたことのない低い声が部屋に響いた。

口を噤む慈英と慈英を見つめる社長の成り行きを見守る。


「副社長としても言えるのか?」

「…………いや、言えない。今なら社内だけで抑えられる。」

「そうだ。社外に拡散される前に対処する必要がある。これ以上のスキャンダルはミサキ商事には悪影響を及ぼす。」