私を取り囲むように先輩秘書の顔が並ぶ。

ゴクリと唾を飲み込んだ。


「雨宮さんと副社長はいつが暇?」

「えっ?」

「色々と聞きたい。暇な日に飲みに行こう。」

「あっ、はい。副社長に確認してみます。」

「お願い。絶対だよ。」


迫力負けしそうだ。

でも堂々と言ってくれている。


「私も武内も行くから。」


隣から聞こえてきた声に頷いた。


「よっぽど興味があるようね。兄の何処がモテるのかしら。」

「カッコいいですよ。」

「あら、惚気?」

「違います。」


恵さんと話していれば、内線が鳴り始めた。

手を伸ばして受け取る。


「はい、雨宮です。」

「俺、賢。」

「賢?」

「同期が集まる。勿論、来るよな?」

「いつ?」

「来週の金曜あたり。」

「わかった。」

「営業は『副社長が婚約した』って話題で持ちきりだ。」

「そうなんだ…………。」

「飲み会は来いよ。」

「うん。」

「一人で帰るなよ。俺も誘え。」

「ふふっ、ありがとう。」


賢の内線が切れた。