「嘘って、どういうことですか」
「そうやって言わないと、水野さんは来てくれないと思ったから」
「……策士」
「水野さんとゆっくり食事でもしながら話したかった。でも正直に誘っても断られる可能性が高い」
反論の余地はない。
実際神崎さんが言うように誘われても、何か裏があるんじゃないかと疑っていただろう。
「俺はただ、水野さんのことをもっと知りたいし、自分のことも知ってほしいって思った」
「私、そんなに面白い人間じゃないですよ」
「俺は知りたい」
真剣な瞳で射抜くように見つめられる。
知りたいって、言われても。
「た、例えば?」
「編集者になった理由とか、休みの日は何をしてるのかとか」
どうして神崎さんは私のことを知りたがっているのか。
真意を掴めないまま、けれど神埼さんの話術にのせられて質問に答えていく。
似たようなやりとりを蓮見先生ともしたなぁーと思い出す。
蓮見先生は、今頃何をしていらっしゃるんだろう。
作品の執筆か、それとも同じように夕食を食べているのかな。



