「拓也がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。抱っこまでしていただいて」
「いいえ。俺、普段子供と接する機会がないので。こういう時抱くことくらいしか出来なくて」
抱くことくらいしか、と神崎さんは言うけれど。
本当は違う。
拓也君が不安にならないように声をかけていたし、拙い話にもしっかり耳を傾けていた。
「実は、拓也は人見知りで。知らない人に抱っこされるとぐずるんですけど。あなたは大丈夫みたい」
「そう言ってもらえると、安心しました」
「ほら拓也。お兄さんとお姉さんにお礼言って」
神崎さんの腕の中からお母さんに抱きしめられる。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがと」
「今度はしっかりお母さんの言うこと聞くんだぞ」
「あんまり夢中になりすぎちゃダメだよ」
「うん!」
拓也君とお母さんは二人とも安心した表情で、ショッピングモールを出ていった。
「見つかってよかったですね、拓也君のお母さん」
「ああ。すぐに合流できてよかった」



