ふたりで近くのスタッフさんに声をかけようとした、その時。
「拓也!何してるの!?」
左側から、拓也と名前を呼ぶ大きな声が聞こえた。
「すみません!うちの子が」
「お母さん!」
現れたのは、確かに拓也君の証言通り白いプリーツスカートをはいた私より背の高い母親だった。
「ちょっと夕飯の買い物してくるから金魚すくいの場所で待っててって言ったでしょう!?」
母親は大きく肩で息をしながら声を荒げる。
多分、拓也君がお母さんを探して食品エリアへ向かったのかもしれないと、夏祭りブースと何度か行き来していたに違いない。
「……っ、だ、だって」
じわり、拓也君の瞳に涙が浮かぶ。
「お母様、拓也君も夏祭りが楽しくて夢中になってしまったんだと思います。どうか、怒らないであげてください」
差し出がましいと思いつつも、そう言わずにはいられなかった。
このくらいの年頃なら、夏祭りの出し物のことで頭がいっぱいになっても仕方がない。
母親の心配を思えば、そんなことは言っていられないだろうけど。



