私と王子様のプロローグ




しゅん、としょげた声で拓也君が答えてくれる。


「いないかー。拓也君のお母さんはどんなお洋服着てる人?私より背は低い?」


「白いスカート。お姉さんより高い」


「白いスカートで水野さんより背が高い人か……」


金魚すくいのブースを離れて、出来るだけ中央に立つ。こうすれば向こうからも見つけやすいと思ったからだ。


「白のトップス着てる人ならいますけどスカートは見えませんね」


「なあ拓也君。お母さんと一緒にいるとき、何か言われなかったか?ここで待ってて、とか」


また泣きそうになる拓也君の頭を撫でながら、神崎さんが聞く。


「んー……言ってた、かも」


言ってたかも、ということは出し物に夢中になっていたせいでお母さんの話を聞いていなかった可能性がある。


「神崎さん、迷子の館内放送してもらいましょうか」


「そうだな。あのスタッフの人に聞いてみよう」


てがかりが少なすぎる。忙しそうにしてるところ申し訳ないけど、スタッフさんに助けてもらおう。