私と王子様のプロローグ



「本当のことを言ってるだけなんだけど」


食えない笑みを浮かべて言う台じゃない。


素の顔を見せたと思ったらすぐに引っ込める。


「そうやってすぐはぐらかす」


「いじけた顔しない」


「い、いじけてなんか」


「お母さーん!!」


ゆっくりレストランフロアへ行こうとしたところで、男の子の大きな声が聞こえた。


「お母さん!おかーさん」


水風船を手に持ちながら、ぐるぐると辺りを見回していて。


夏祭りのブースで遊んでいる間にはぐれてしまったんだろうか。


どうしたのか聞いてみよう、そう思って駆け寄ろうとしたら。


「お母さん探してるのか?」


スッと横を通り抜けて、神崎さんがしゃがんで男の子の頭を撫でた。


聞いたこともない優しい声で話しかけている。


「お母さんがね、いなくなった」


「そっか。君名前は?」


「……た、拓也」


「拓也君か。拓也君はさっきまでどこにいたの?」


神崎さんが聞くと『あっち』と夏祭りブースを指さす。