私と王子様のプロローグ



「神崎さん、手伝っていただいてありがとうございました」


「俺もちょっとやりたかったから。むしろやれて楽しかった」


楽しかった、その言葉は嘘じゃないと雰囲気で分かる。


私だけだったらこのメモスタンドは手に入っていなかった。神崎さんがアドバイスして手伝ってくれたおかげだ。


思いのほかメモスタンドが可愛くて見入っていると、視線を感じて顔をあげた。


「神崎さん?」


「……っ、いや、何でもない」


ふいっと視線を逸らされる。神崎さんらしくない仕草に首を傾げる。


「どうかしました?これ欲しかったならお渡ししますよ?」


「その猫が欲しいんじゃなくて。……水野さんが、笑うから」


素っ気なく言われた台詞に頬が熱くなる。


「私変な顔でニヤけてました?うわ、恥ずかしい」


「違う。俺といるときにそうやって自然に笑う顔、滅多に見ないから」


「それはいつも神崎さんが意地悪なことを言うからですよ」