「……明日」


「ん?」


「明日、朝ごはん。何が食べたいですか?」


「梓の得意料理。材料は野菜から何から揃ってたはず」


「分かりました、楽しみにしててください」


「この会話、新婚みたいじゃない?」


「……そういう、恥ずかしいことを」


「はは、照れなくてもいいのに」


照れるに決まってるでしょう。自分とは、無縁の言葉だと思っていたから。


「おやすみ、梓」


「おやすみなさい。蓮見先生」


「……千尋って、呼んで。今は」


「おやすみなさい。千尋さん」


照れた顔を枕にうずめて目を閉じる。


そうしてる間に、ゆっくり意識が遠のいていった。


だから。


「大事にしたいって、思ってるんだよ」


淡い月明かりが降り注ぐ静かな空間で、蓮見先生が紡いだ言葉には気づけなかった。