―――芹澤部長に蓮見先生の担当を任されてから数週間後。

多忙な先生とようやく都合が合い、朝から気合いを入れて先生が住むマンションまで来たものの。

「ここの最上階に住んでるって、どういうこと」

教えられた住所をもとにちゃんと調べて来たんだから、間違ってはいないはず。

でも目の前にそびえ立つのは、天まで届きそうな高さのある超高層マンション。一体家賃はいくらですか。

ずっと見上げていると首が痛くなってきた。

「行くしかないよなぁ」

雰囲気に圧倒されて後ろに下がりそうになるけど、なんとか耐えてエントランスへ。

先生に連絡して通してもらい、エレベーターに乗り込む。

セキュリティシステムの関係で当該フロアにしか止まらないようになっているらしく、自分が住んでるところと違いすぎて思わずため息を吐く。

さすが蓮見先生、住む場所も一流だ。

そしてついに、先生の部屋の前へ。

「蓮見先生、お世話になっております。先日連絡いたしました新星社編集部の水野と申します」

『今開けます』

音声に続いてガチャッ、とドアが開いた。

「初めまして。水野さん」

落ち着いた、耳障りの良い中性的な声。

ミルクティー色の柔らかそうな髪に、整った顔立ち。バランスのいいプロポーション。

『おとぎ話に出てくるような王子様』だと初めに言ったのは誰だったか。