隣に座る蓮見先生に顔を覗き込まれる。


「あ、会場に着くまでに参加企業名を確認してたんです」


「梓のことだから、そういうのは事前に覚えてるんじゃない?」


「覚えましたけど、最終確認の意味で確認しておこうかと」


蓮見先生はふぅん、と私の手元にある名簿一覧とパーティーのパンフレットを眺める。


名簿は自分で作成したもので、企業名とどんな事業をやっているのか、誰が参加する予定なのかなど分かることをまとめておいた。


「梓なら大丈夫だよ。緊張で笑顔が強張るのはもったいない」


「そうだぞ水野。お前、このパーティー初めてじゃないだろ?」


「はい。一度新人の頃に同行させてもらいました。でもその時は会場の空気にのまれてしまって、あんまり覚えてないんです」


今ほど規模は大きくなかったにしても、その頃の自分にはじゅうぶん別世界に映ってみえた。


有名な作家から出版社まで肩書も様々な人が一堂に会する様は圧巻だった。


「誰だってあのパーティーに初めて参加するならそうなるさ。蓮見は違ったが」


「俺だって多少緊張してたんだけどね」


「よく言う」