「はーぁ」


たとえ昨日、一流作家から『結婚を前提につき合おう』と告白されたとしても。


その衝撃に耐えられないので有給使って休みます、とは言えない。


だから昼休みに周りを気にせずため息を吐くくらいは許して欲しい。


「水野さん、水野さーん!」


「わ、なんだ酒井か」


後輩の酒井がコンビニの袋をテーブルに置いて、なぜか当たり前のように隣に座った。


「水野さん全然弁当減ってませんけど。もういらなかったらおれ食いますよ?」


「その特盛弁当で十分でしょ」


「最近は一日中営業なんで。体力つけないと」


この夏の暑い中、オフィスから出るのすら億劫なのに本当に感謝だ。


「そっか。ならから揚げと卵焼きあげる」


「水野さんの手作りっすよね?これ」


「うん。なんかこう……気を紛らわせたくて作っちゃった」


「何があったんすかそんな遠い目しないでくださいよ」