「愛衣」
「はい」
奏大さんは私の目をしっかり見て名前を呼んでくれた。
そんな風に見られると、恥ずかしいのに私も目線をそらせない。
「遅くなって悪かった。誕生日おめでとう」
「ありがとう、ございます」
たった一言お祝いの言葉を貰っただけなの
に、何故だかそれだけで途端に泣きそうになる。
私は奏大さんがどんな人だと知っても、それでも。
「わざわざ会いに来てくれて、ありがとうございます」
「なんでちょっと泣きそうなの」
奏大さんが優しく頭を撫でてくれる。
優しい。
奏大さん優しい。
奏大さんが好きだ。
好きになったの。

