「俺は愛衣が知った通り、和泉奏大って名前でモデルやってる」





「.....はい」





そこから奏大さんは私を抱き締めたまま、ポツリポツリと初めて出会った日のことを教えてくれた。






あの日は撮影があり偶然うちの店の近くの街に来ていたこと。




その日は少し問題が起きて奏大さんは撮影現場から少し離れた場所で一人でご飯を食べなくてはいけなくなったこと。




人が多くいる場所だと素性がばれてしまった時、ご飯どころではなくなるため、なるべく小さく、自分を見て騒ぐような若い人がいなそうな店、つまり結果としてうちの店を選んだこと。





「そうしたら、愛衣が出迎えてくれた」





「......」





「正直、入った瞬間はどうしようかと思った。だから、一応顔は隠してたけど声でもバレるかなと思って始めは喋らなかった」






「そう、だったんですね」





若い人がいなそうなところを、と思って選んだ店なのに出迎えたのが女子高生だもんね。





それは迷うよね。





だから全く話してくれなかったんだ。





奏大さんは「最初は感じ悪かったよな。ごめんな?」と申し訳なさそうに謝ってくれたけど、そんなことないってやっぱり頭をふるふると振って否定した。