「.....奏大さん、本当は凄い人だったんですね」






「....!」







そのたった一言だけで、奏大さんは私が何を言おうとしてるのか察したのだろう。






それでもまだ何も言おうとはしてくれなかった。







「実は今日、友達と映画を見てきたんです。何も知らなくて。その中に奏大が出てました。凄く、びっくりしました」






「.....」





「私、そういう芸能界とか疎くて。俳優さんとかモデルさんとか全然分からなくて。奏大さんがまさかそんな人だったなんて思わなくて。本当に今まで知らなかったんです」





「.....」





「どうして、言ってくれなかったんですか?」






「愛衣......」






「奏大さんは全国の女の子の憧れです。だから、私みたいな普通の女子高生一人にこんな風に時間を割いたり、プレゼント買うなんて、本当は有り得ないことだって分かったんです」






「愛衣」






「こうやって会ってくれるの、凄く嬉しいけど。嬉しいけど、でも、だめだよ、奏大さん。.....やっぱり、私なんかがこんな風にしてもらっちゃだめだと思います。何かあったら個人の問題じゃ済まなくなるし、奏大さんとは、世界が違いすぎる」





話しているうちに堪えていた涙が出てきた。






あんまり幸せな夢を見てると目が覚めたときに切なくなる。





こんな風に優しくされたら、忘れられなくなる。