「お前の手あったけー」




今にも泣き出しそうなくせに、やせ我慢する宗平。




感情をぶつけてくれてもいいのに。




話してくれてもいいのに。









…私じゃあ不足なのかなあ。










6月と言えど夕方になるとまだ少し肌寒くて、ユニフォーム姿の宗平にとっては私の肌が温かく感じるのかもしれない。





宗平は私のもう片方の手を掴むとそれも頬に持っていった。






「このモッチリ癒されるわ」





「なっ…」






一言怒ってやろうかと口を開いた瞬間。





捕まれていた両手が宗平の頬から体へと移され、腰辺りを包み込む状態となった。




宗平の手も私の腕から離れると、私の肩の辺りを包み込むように触れ、そっと引き寄せる。









「そ、宗平」







宗平が着ているパーカーに顔が押し付けられ、くぐもった声になった。











「…お前いてよかった」








周りには誰もおらず静かで、強いて言えば小鳥の声だけが聞こえて。




でもそんなの耳に入ってなんて来るわけがなくて、上から宗平のか細い声だけがダイレクトに聞こえた。







私を包み込む腕に力が込められる。






さらに体が密着して私の心臓の動きは速度を上げた。







「ドキドキしすぎだろ」





「う、うるさい」






やっぱり伝わってしまっていた。





こんなの隠せるわけがない。







試合で勝って抱き合う喜びと全く違う。













もう、愛しくてしょうがない。