きっと今、生きてきて最高潮にドキドキしている。
身体中の熱が頬っぺたに集まって、
きっと宗平の手に私の熱が伝わってしまっているはず。
私の気持ちを知られてしまうんじゃないだろうか。
むしろ知られても今ならいい気もする…
絡み合う視線と視線。
込み上げてきて来た思いが目から溢れそうになった。
「宗平!」
少し離れたところから聞こえてきた声に私たちは顔を向けた。
階下へと繋がる階段のところに立っている人影。
「綾美…」
宗平はそう呟くと静かに私の顔から手を離した。
数日前に見た見覚えのある女性。
あのときと同様に何とも言えない感情が沸き上がってきた。
「宗平、ここにいたんだ。ずっと入り口で待ってたんだよ…?」
今にも泣きそうなか細い声を出す綾美さん。
「なんでいるんだよ」
宗平が大きなため息を吐いた。
「その人、この前の…」
綾美さんの視線が私に向く。
私は小さく会釈した。
「付き合ってるんじゃないんだよね…?」
私を無視して綾美さんは続ける。
「いやいや、そんな関係じゃ…」
私は両手を振って否定した。
まさかまさか、宗平とそんな関係になれるわけ…。
「よかったー」
小さく息を吐くと綾美さんは嬉しそうに笑顔を見せた。
よかった?
意味がよくわからない。
頭の隅でなにかが引っ掛かる。
「綾美」
宗平の顔が今日一曇った。
「帰れ。お前のいるところじゃない」
低い声でそう言って綾美さんを睨むと、宗平は私の腕を掴む。
「行くぞ」
ベンチに置いてあったエナメルバッグを持ち、宗平は私の腕を引いて歩き出した。
「ちょっ…いいの?」
宗平の後ろ姿に問いただす。
絶対この状況よくない。
チラリと綾美さんの様子を伺うと、今にも怒り出しそうな、泣き出しそうなそんなような顔をしていて。
一体なにが起きているのか私には検討もつかなかった。