「勇人って、勇人?」




「うん」







頭の中に天使のような悪魔の勇人が映し出された。





ちょっと待って。




混乱してきた。





今なんの話してるんだっけ?









たしか、早希の気になる人の話になって、それが勇人…









「紗英?」





「ええええええええええええ!!」






結論が出た瞬間、体が勝手に立ち上がった。






「ってびっくりしたー」





パッと下を見下ろすと驚いた顔の早希。





いやいや、驚くのは私の方。






「勇人のどこが!?あいつ天使のようで悪魔だよ?」





なんの冗談。




勇人のどこが良いって言うんだ。









つい鼻息が荒くなる。






「悪魔?そうかなあ。私には全くそんな風には感じないよ?とてもいい人」





手で両頬を多いながら早希は言った。




いつにも増して可愛く、とても幸せそうな顔をしている。












そうだった。






勇人は悪魔だけど本当は悪魔を纏った天使。




なんだかんだ優しくて、面倒見がよくて。





いつも自分じゃない他人のことばかり気にしてて。





どれだけ私もその優しさに救われて来たか。









心を落ち着かせて私はもう一度座った。










「…うそ、悪魔なんて冗談。勇人いいと思う。好きになったらきっと幸せになれる」







今思えば、幼なじみとして過ごしてきた時間は私にとってはとても幸せだったかもしれない。






恋をしなかったのが不思議なくらいだ。











幼なじみとして幸せで、だからそれ以上のことは望みもしないし、今の関係がなくなるだなんて考えもしたくない。








もし勇人も恋をするんだったら、ちゃんとお似合いで私が望むような素敵な人としてほしいと思う。













「だから、私も早希のこと応援する」







でも一つだけ問題が。






そういえば勇人の恋の話って聞いたことがない。




今度、聞いてみることにしよう。