「口にクリーム付いてんぞ」




宗平は私の顔に向けて指を指した。




「えっ」




慌てておしぼりで口の周りを拭う。




気をつけて食べていたのに恥ずかしい、恥ずかしすぎる。




吹き出したり、クリーム付けたり本当に散々だ。



 




「どんくせえな」




そう聞こえたかと思うと、ぐいっと宗平の手で拭われた。





どうやら、私が拭いていたところは的外れだったようだ。






「あ、ありがとう」





恥ずかしいことなのに私の心臓はドキドキしている。





宗平のひとつひとつの行動の全てに体が反応してしまう。







でも…






その反面、宗平はこういうこと躊躇いもなく普通にできるんだと思うとなんだか切なくて。





きっとたくさんの女の子とこういうことしたり、触れ合ったり。





それを想像するとまた違った動きを私の心臓はする。





なんでいい気持ちを味わうと、それを知れば知るほど自分で悲しくなるようなことを考えてしまうのだろう。





自問自答してみても全然わからない。





はじめてのことばかりでこれが正しいのかも、一体この気持ちがなんなのかも私は知らない。




   





「そろそろ行くぞ」




テーブルの脇に置かれた伝票を持つと宗平は立ち上がった。




慌てて私も席を立ち上がる。