そんな機会なんてあることなんてないと思ってた。




むしろ、忘れていたのに。









それなのに私の願いもむなしく、早希の望み通りそのときはすぐにやって来た。














昼休み。







「きゃーーーー!!」





「あの先輩って…」





「噂通りかっこいい…」






早希と昼食を共にしていると、なんやら女子たちの黄色い声が聞こえてきた。






私には何の関係もないと思い気にも止めていなかったのに。







「千曲さーん、呼んでるよ」




教室の端からクラスメートに呼ばれ視線を移すと、後方入り口に谷岡宗平がもたれかかっていた。





げ、なぜ。





「来た!王子が紗英に会いに来た!」




と、早希が手にしていたサンドイッチを咄嗟に机に置いて私の肩をバシバシと叩く。





「これ、行かなきゃだめ?」




これほどにクラス中からの視線を浴びたことはあっただろうか。




痛いほど視線が突き刺さる。



 

「ダメでしょ、行ってこい!」





なんかとても嬉しくない。




なぜ呼び出されているのかも謎。




ため息を吐いて仕方なく立ち上がり席を外す。




足取りが重たい。







みんなの視線を避けるように俯いて入り口に向かった。