思いもよらない事態にまだまだ未熟な私には解決方法なんてわからなくて。


感情のままにそのときを過ごして、あたかも解決できたかのように思っていた。



その場凌ぎの嘘や、相手に合わせる術も私には具わっていない。



それが良いことなのか、それとも悪いことなのか。



自分の感情にすら惑わされているのかもしれない。





つまり、自分のことを何一つ理解していないのに、相手のことなんて知る由もない。



一体、この16年年間なんのために生きてきたのだろうか。



そんなふうに考えるようになったのは高校生になってたくさんの人と出会ってからだった。






今だってそう。


目の前に座っている“好きな人の妹”の考えていることなんてちっとも分からないし、どうしていいのかも分からない。



壁に飾られている振り子時計の秒針の音がやけに大きく響いてくる。



対面で座って数分が経つ。



呼び止めた綾美さんもきっとどう切り出したらいいのか分からないのだろう。



冷めてしまったコーヒーを啜った。



私のその動作に綾美さんの体が少しビクついたのが視界に入ってきた。


「…どう言ったらいいのか」



手に持つカップを置くのと同時に綾美さんがやっと言葉を発する。



その声はとてもか細かった。



「…何をですか?」



相変わらず綾美さんが何を思って何を考えているのかちっとも分からない。



それは綾美さんが私に対してもそう思っているのかもしれないが。