「勇人さ、早希に気持ちが追い付いてないって言ってたでしょ?」



石段に座り落ち着いてから切り出した。



「あー…うん」



なんとなく微妙な反応。


これは何を意味しているのだろうか。



「それってつまり、好きになりかけてるってこと?」



横に同じく石段に腰かける勇人の顔を覗き込む。



目が合うと、勇人は唇をきゅっと結んだ。



「早希は可愛いし、いい子だよ。だから親友でもあり幼なじみの勇人と早希の想いが通じ合ったなら、私もすごく嬉しい」



ね?


と声をかけても相変わらず唇を結んだままの勇人。



一体何を考えているのだろうか。



「どうしたの?」



勇人の表情からだと何も読み取れない。



カラコロカラコロと下駄の音たちが響き渡る。


私たちの前を浴衣姿の人々が行き交っていく。


たくさんの笑い声や会話がごちゃ混ぜになって耳を掠めていた。



「勇人…?」


相変わらず何も発声のない勇人にもう一度声をかけた。



「…な、ほんと」



私の目をじっと見つめながらやっと聞こえてきた勇人の声。



喧騒の中に混ざってよく聞き取れない。



「え?」


今度は勇人の口元の近くに私は耳元を近づけた。



「好きなんだよ、おまえが」