私の横から早希がすっと立ち上がった。




肩に置かれていた早希の手が離れていくのを目で追いかけていく。






「紗英。恋は自分で手にいれなきゃダメだよ。誰も与えてくれない。本当に必要ならしがみついてでも放しちゃダメだよ」






私の方を向いた早希はそう言うと、ベンチから離れていった。






しがみつくって一体どうやって?





どうしたらいいのか分からない。










「悪いね」






「泣かさないで下さいね」







少し離れたところから会話が聞こえてきた。







数秒も経たずして人影が足元に現れる。






ふわっと香ってきた匂いで顔を見なくても誰だか分かる自分が悔しい。







「ごめんな」





今日何度か聞いた言葉が上から降ってくる。





そんな言葉を聞きたい訳じゃない。







「逃げたり泣いたりそんなに嫌だったか…?」







そうだった。





体育館でのあの出来事のあと私は逃げるようにしてここに来たんだった。







「…嫌に決まってる。宗平はこの学校からいなくなるの平気…なの?」





                       

「え?」










「宗平がいなくなったら、寂しいよ…」






「え?は?」







人が意を決して気持ちを伝えてるのになんでこの反応。 










「ちょっ…」






上を向いて言い返そうとした瞬間、ドカッと宗平が横に座った。 








「待て。俺は今混乱している」







視線が合うなり宗平は訳の分からないことを発する。




こっちが混乱しそうだ。