『それでは照明さん、用意はいいですか?』





実行委員長の浅川先輩がマイクを通して照明係に尋ねる。




“OK”という機械音がアリーナに鳴り響くとどっと笑いが起こった。




学園祭の全てにおける演出が実行委員により決められたもので、何か変わったことが起きると笑いがとれる素晴らしい演出ばかりだった。





その成果が出たのか、後夜祭はアリーナの半分を蝋燭のグラスで埋めるため自由参加だったが、例年通り半数以上減るだろうと予想されるも今年はそれを遥かに越え体育館の入り口まで生徒で溢れ返っている。








そして参加生徒における




『3・2・1・0』




のカウントがされると、アリーナの照明が落とされオレンジ色の光が浮かび上がった。







その瞬間に大音量の歓声が沸き上がる。





オレンジ色で示されるのは、“I ♡ 北高”の文字。




アリーナで見ていると見えないためにステージ横に掲げられているスクリーンに生徒は目を向けていた。







その様子を上から見ていた私も





「わー…すごい」





と、2階からだと直に蝋燭でできた文字を見るとこができ、さらに感極まる。





「よかったな」





隣で宗平が呟いた。





「うん」




込み上げてきた涙で蝋燭の灯りが滲む。









ついに終わってしまった。







毎日忙しくて大変な思いをしたけれど、過ぎてみればそれもいい経験で。





1から全てを造り上げる難しさや達成感を学びながら、2か月という時間を全て学園祭に費やした。





たくさんの人たちと言葉を交わし、行動を共にし過ごしてきた初めての瞬間。





走馬灯のように思い出される。






「何泣いてんだよ」






「だって…」






涙を流さない方が無理だ。






それに。





学園祭が終わると言うことは、宗平との時間も終わってしまうということ。





昨日聞いた“寂しい”が現実になる。






「ほら、こっち向け」





ぐいっと肩を掴まれて宗平の方に向けられた。






見上げると、オレンジ色に映し出された宗平の顔。









宗平も切なそうだった。








そっと宗平の手によって涙が拭かれ、閉じた目を開くと見たこともない優しい笑顔の宗平がいる。








私も口角を上げて笑顔を作った。







「私たち、これでさよならだね」






再び涙が溢れる。







それを宗平が親指で拭うと、宗平の顔がゆっくりと下りてきて、








私は自然と目を閉じた。










そして私たちの唇が重なったーーーーーー