ロマンスがありあまる

「えっ?」

訳がわからないと言うように聞き返した専務に、
「婚約を破棄させてください」

私は言った。

「…もしかしてとは思うけど、両親に僕のことを話したの?

僕のことを話して反対されたの?」

そう聞いてきた専務に、
「違います」

私は返事をした。

「じゃあ、どうして?」

それに対して、私は答えることができなかった。

ただ1つだけ言えることは、
「――ごめんなさい…」

それだけだった。

何か言いたそうな専務を無視すると、スマートフォンを耳から離して通話を終わらせた。

彼からの電話が繋がらないように、スマートフォンの電源を切った。

専務には申し訳ないと思っているけれど、やっぱり無理だと私は思った。