ロマンスがありあまる

それに対して父は少しだけ考えると、
「嬉しくもあるけれど、寂しくもあるな」
と、言った。

「寂しい?」

「そりゃ、娘だからな」

父はそこで話を切ると、
「楓子には、迷惑をかけたからな」
と、言った。

「迷惑?」

意味がわからなくて思わず聞き返したら、
「働けなくなった俺の通院費と紫子の学費を出してもらってるから。

自分だっていろいろと大変なのに」
と、父が答えた。

「そんな…私は、迷惑だなんて思ってないよ」

私は首を横に振ったけれど、
「早いところ、楓子には幸せになって欲しいって思ってる」

父はそう言ったのだった。

「そ、そう…」

チクリと、私の胸が痛くなった。

「私、トイレに行ってくる」

私はそう声をかけると、早足でリビングを後にしたのだった。