周りの木からセミの声が聞こえ、今にも倒れてしまいそうな気温の中、私、八雲優は自転車をこぎながら、道の端に生えた木の木陰を通る。
スピードを上げる度、自分に当たる風はどんどん勢いを増し、青いリボンで結んでいた長い黒髪は、風になびく。
昔からの癖で、私は勢い良く立ち上がり、そのまま自転車をこぐ。
私の黒髪だけでなく、私の履いていた紺色の膝までのスカートも風になびき、後ろは今にもスカートの中が見えてしまいそうだ。
一応私は女なのだが、性格はと言うと男っぽくて、スカートの中が見えようが気にしない。
見る奴の方が悪いのだから。
どんどん広くなっていく道を、どんどん自転車で進むと、私と同じ制服を着た高校生がちらほら見え始める。
青色の帯に白色の夏用制服、紺色のスカートを履いた、私と同じ、神原高校の生徒達だ。
っと早速、見慣れた後ろ姿の人が目の前で歩いている。
「やっほー!さっちー!」
「おぉ!おっはよー!優!」
私の友達、さっちーこと青葉幸千だ。
彼女は我が神原高校の中で上位に入るほどの学力に、身長が高くスマートな身体のため、モデルもやってる超がつくほどの完璧女子だ。
そんな子となんの取り柄もない私が友達なのは、いつも不思議に思ってしまうレベルだ。
「さっちー、今日の予定は?」
「今日はモデルの仕事の他にも、役者の仕事も回ってきてるから、もしかしたら一緒に居れる時間ないかも。」
「そっかー。」
さっちーはモデル、しかも努力家で、相手が認めようが自分が納得行くまでやるような子だ。
さっちーは普通の高校生である皆とは全然違う。
まぁ、私も違うのかな?一応……。
実を言うと私は影の努力型小説家だ。
親にも言わず、先生にも言わず、影でコツコツと書いてきた小説が、ついに賞をとったのだ。
その事はさっちーも知っている。
「賞、いつ届くの?」
「明日くらいかな?もうワクワクしてるよ!」
ワクワクが止まらず、明日が待ち遠しい位だ。
早く明日よ、来てくれ。

~続く〜