「お姉ちゃんがあいつを避けるようになった」

「お姉さんが?」

「うん。お姉ちゃんの帰りが遅くなった」

それは去年の春頃

先に気付いたのは杏珠のお姉さんだった。

その男性は杏珠のお母さんから家の鍵をもらってるので、杏珠のお母さんが仕事が遅い日も家に入り込む。
お母さんはその人を信頼していた。

だから
杏珠のお姉さんがお風呂に入っている時、間違ったふりをして一緒に入ろうとしたり、お酒を飲んでふざけて抱きつくのが本当に嫌で、お母さんとケンカしながら訴えたけど、杏珠のお母さんはお姉ちゃんの言葉を信じたくなくて、ただの気のせいとしか受け止めてくれなくて……杏珠のお姉さんは家を出た。

お姉さんは杏珠が心配でたまらなかった。
一緒に連れて行きたいと思った

けど

杏珠はまだ中学生になったばかりで
お姉ちゃんが大好きだけど
お母さんとも離れたくない

それに
その男はまだ杏珠には優しく
ごくごく普通だったから。