杏珠は時に早口になり
時に重い口になりながら
私に話をしてくれた。

その内容は平凡な生活を送ってる私にとって、信じられない話だった。


杏珠のお母さんとお父さんは、杏珠が幼稚園の時に離婚した。
杏珠はそれから
大きな化粧品会社で働くお母さんと、大好きなお姉ちゃんと三人で暮らしていた。
お母さんは仕事で忙しいけれど
三人仲良く暮らしていた。

私が杏珠のお父さんと思っていた人は、半年前から家に出入りを始めて、気が付けば杏珠の家にたまに泊り込んで生活をしていた。

杏珠のお母さんは綺麗なので
その時その時で色んな彼氏がいたらしい。

お母さんの彼氏と杏珠との接点は、たまに一緒にご飯を食べるくらいで、家に泊まる男性は初めてだった。
杏珠のお母さんも杏珠の事を一番に考えてくれていたのに、どうやらお母さんはその男性に夢中で結婚話も出ていたようだ。

最初の頃は杏珠も喜んだ。
その男性は面白くて優しいし、勉強も教えてくれた。
ケーキのお土産も忘れない。

お母さんはその男性が来る日はいつも笑っていて、家に笑顔が絶えなかった。

杏珠はお父さんに憧れていたので
とっても嬉しかったけど

お姉ちゃんの様子に変化が現れた。