誰かがどこかで救われる


「何か飲む?持って来るね」

杏珠はそう言い
私に自分のスマホを渡して部屋を出て行った。

そうだ。お母さんに電話しなきゃ。

わたしはお母さんの携帯番号を思い出し、指を滑らせると

『晩ご飯の時間だから、相手の家にも迷惑でしょう!早く帰ってらっしゃい!』

想像通りの言葉が返る
さすがお母さん。

ため息をついて
テーブルの下からはみ出してるおしゃれな雑誌を読んでいたら、扉の外で声が聞こえた。
杏珠と言い争ってるような声。

『早く帰ってもらいなさい』

さっきの杏珠のお父さんだ。

うわぁ
歓迎されてない
アウェイ感でいっぱい。

でもさー
さすがにその言い方はないんじゃない?
娘の友達だよ
そりゃ
杏珠みたいな可愛くないけどさ。

うちのお父さんなら
『遅くなるって、家の人に連絡だけ必ず入れようね』って言うし

きっとお母さんは
『帰りは送ってあげるから、ご飯食べて行きなさい』って言うよ。

そこの家
それぞれだから

違うのか

でもなんか嫌な感じ。