あまり通った事のない道を20分ほど歩くと、静かな住宅街が並んでいた。
薄く青い空に星が輝く時間
私は杏珠に誘われて
杏珠の家に入る。

杏珠の家は可愛らしい平屋の一軒家。
可愛らしいといっても、一軒家ってスゴいと思う。
うちはマンションの3階で妹とふざけて走り回ると、本気でお母さんに「下に響く!」って怒られている。

小さな門を入ると
両脇に花壇があって
季節の花が咲いているけど雑草の方が多くて、雑草に埋もれている感じがした。

杏珠は玄関の前で鍵を出し
それを鍵口に入れるけど
回す必要なく開いたのを確認して舌打ちをした。

「私の部屋まで直行ね」
杏珠は珍しく私に強く言い
私もうなずいてから
ドアを開いて玄関に行くと

「おかえり」と、男の人が出て来た。

杏珠の帰りを待っていたかのように
笑顔を作って出てきたけれど
後ろに私が居るのを確認して、ちょっとだけ嫌な顔をした。

すぐ顔に出るタイプなのかな。

やっぱり学校帰りだし
もうすぐ夕食の時間なのに
歓迎はされないか

うちのお父さんより若い雰囲気。

痩せていて背が高くて
嫌な顔を戻して「いらっしゃい。友達?」って言ってくれた時の顔は、優しかった。

「すいません。おじゃま……」

「心愛。こっち」

杏珠は挨拶途中の私の腕をつかみ
廊下を進み
奥にある自分の部屋まで連れて行く。

あ……お父さんにご挨拶もしてないよ
印象悪くしちゃうのに。