金曜日。

部活が終わって
先輩と一緒に学校を出るとホッとする自分がいた。

一週間終わった。

雨上がりの夏の始まり
ふーっと大きく息を吐く。

まだ中学2年なのに
疲れたサラリーマンみたい。

グラウンドから聞こえるのは野球部の大きな声。
平子君の声も混ざってる。

空は濃いオレンジが遠くにあって
そろそろ夜に押しつぶされていく時間。
ポツリポツリと街灯が点き
いろんな色が混ざる時間。

先輩と別れてすぐ
それを待ち構えたように背中から声がかかった。

「心愛」

まだ家には帰ってなかったのか
杏珠は制服姿のままで私の名前を呼ぶ。

「杏珠?」

杏珠は半分泣き笑いな顔をして
私の前にやって来て

「お願いがあるの。心愛にしかお願いできない」

って私に言う。