誰かがどこかで救われる


「本当に?」
私が聞くと手を止めて
ゆっくり顔を上げて

「心愛は?」と、私の質問に答えず逆に質問をする。

「私は……いたけど、その人は……別の人が好きなの」

「そっか。残念だね」
悲しそうな顔で私を見る杏珠。

そんな顔で見ないで
私の好きな中原君は杏珠が好きなんだよ。

私は手に持っているシャーペンで、グルグルとノートにらせんの渦を描く。
ぐるぐるぐるぐる
ノートからはみ出るぐらいの勢いで、とりつかれたように渦を描く。

「シャーペンの芯が折れちゃう」

「いいの」

「心愛?」

「杏珠はどうして中原君をふったの?」

「どうしたの?」

ぐるぐるぐるぐる
私の頭の中もぐるぐるぐるぐる

大好きな中原君
大好きな杏珠
私に告白してくれた平子君
私を嫌う実花
気をつかう萌ちゃん

ぐるぐるしてる。

杏珠の事が大好きだから
大好きな分
苦しい。