誰かがどこかで救われる


「心愛、最近元気ないね」

今日も雨。
席の近いイケメン男子達は体育館にバスケに行き、実花たちも一緒に流れて行ったので、教室は静かに雨の音を聴きながら昼を過ごす。

杏珠は私の前の伊田君の席に座り
クルリと後ろを向いて私と向かい合い
ノートに一緒にらくがきをする。

うつむいた時のまつ毛が長くて
頬にかかる髪をかき上げる仕草が綺麗だった。

中原君の好きな人。

「杏珠?」

「なに?」

「杏珠は好きな男子とかいるの?」

「ええーっ?」

杏珠は驚いた声を出し
笑って私の顔を見るけど
私が真面目な顔をしてたので
笑っちゃダメだと思ったのか

「いないよ」って真面目に答えて、ノートに【いないよー】って文字でも返事した。