中原君は驚いて私を見てから
「どうしてだろうね……心愛ちゃんに嘘はつけないな」
穏やかにそう言った。
そのまま
ショッピングモールまで進み
傘を閉じて一緒に中に入り
入口の隅で私と中原君は向かい合う。
「中原君は杏珠が好きなの?」
沈黙を破るように私が言うと
中原君は照れたように
「絶対内緒で……正解」って言った。
いとも簡単に、私の恋は砕ける。
だよね
王子様にはお姫様でしょう
お似合いだね。
「そっか。お似合いだよ。付き合えばいいのに」
泣かないよ
今は絶対絶対泣かない。
大好きな人の前でみじめになりたくないもん。
わざと大きな声を出し
楽しい事だけ考えて
空回りにはしゃいで私がそう言うと
「断られてるから、それはない」
中原君はきっぱり私に言い切った。



