杏珠と仲良くなるうちに
小さな疑問が湧いてきた。
それは
ほんの小さな小さな違和感で
何も考えず通り過ぎればいい違和感で
風邪の始まりのイガイガする喉の痛みと似ていた。
たとえば
夜の遅い時間にお父さんがコンビニに買い物に行くついでに、『遅いからダメ』って、お母さんに怒られながらも私と妹の心音が一緒に車に乗り込み、ついでに街の中を通ってドライブにワクワクしてたら、すれ違いざま夜の風景に溶けるように杏珠の姿を見つけた。
一瞬だけど
間違いなく杏珠で、派手な人達と一緒に歩いてた。
私服の杏珠は中学生に見えないくらい大人びていて、デニムのスカートから伸びた足がとっても綺麗だった。
こんな遅い時間にどうしたんだろう。
私は杏珠の姿が遠く小さくなるまで
車の中でジッと見ていた。
あと
杏珠は美術教師のケンケンが苦手だ。
ケンケンといっても人間で、れっきとした本庄健人(ほんじょうけんと)という名前があり、去年の杏珠のクラスの担任だったと思う。背が高くてイケメンで面白くて天然も入っていて、先生じゃなくてお兄さんイメージで大人気の先生だ。
私も話しやすくて大好きだけど
杏珠は違った。



