三時間目が終わって
中原君が「ありがとう心愛ちゃん」と言って、くっつけた机を離して自分の席に戻ってしまった。

こんなチャンスなかったのに

ガッカリ。

平子君からもらった茶色のシャーペンを手にして、どうしようかと考える。

ミッション失敗。

でもね

中原君に嘘ついて
シャーペンもらって
それを実花にソッコー貢いでも
私の心はきっとスッキリしない。

この席になって
あれだけ地味な私とは縁がなくて
別世界の人達と思ってた
中原君達と話をして
身近に感じた今

実花のミッションを実行したくない気持ちが強くなる。

茶色のシャーペンを試し書きしてみる

スイスイと動くし
書きやすくて持ちやすい

本当に使いやすいね。

「平子君……ありがとう」

また私は、聞こえるか聞こえないかの小さな声を斜め前の背中に投げ、そっと自分のペンケースにそれを入れた。