3時間目の数学
チャンスは突然やってくる。
「教科書忘れた。心愛ちゃん見せて」
私の返事も聞かないで
中原君はいきなり自分の机を私の机にくっつけた。
えっ!
だって
中原君の右隣は同じ男バスの矢作君で、見せてもらうならそっちの方が普通でしょう。
私が驚いてると
「原同盟だし」って
いつもの余裕のある王子様笑顔を見せるから、反論できない。
お互いの机の真ん中に教科書を広げ、授業を受ける私達。
贅沢な時間というのか
緊張の時間というのか
2学年の王子様とこんな近くにいるなんて、ありえないし信じられない。
「心愛ちゃんの字って綺麗だね」
小声で言われて
またドキドキ。
そして急に思い出すのが
実花のミッション!
グレーのペンケースが目の前にある
あぁ
こんなに近くにあるのに
『これ、あげるよ』
なんて……急に言ってくれないかな。
ないよね。