中原君は平子君を無視して
「僕が中原で、杏珠が井原。心愛ちゃんが笹原で原がいっぱい」
そんな話を急に始める。
あ、そうだね。
うん。本当だ。
私が目を丸くすると「原同盟とか作れるね」って、井原さんも笑った。
今
サラッと杏珠って言ったよね
中原君は井原さんを呼び捨てにした。
井原さんをそうやって
名前で呼ぶ人は誰もいないので
なんかそれが
意外とショックだった私。
「たしかにまぎらわしいね。あのね、笹原さんの名前とっても可愛いから、私も『心愛ちゃん』って呼んでいい?私は杏珠でいいよ」
「杏珠なんて呼べない!」
焦って返事をしたら
伊田君がボソリと「言えてるから大丈夫」って言ってくれた。
たしかに……。
「原同盟より名前で呼ぶ方がいいかなって……でも、心愛ちゃんが嫌なら止めるね」
嫌だなんて
そんな……そんな……。
「私も原同盟より全然いい。私は『心愛』でいいよ」
私には珍しく
強く彼女にそう言うと
彼女の表情はパァーっと明るくなり
笑顔が可愛い
ごくごく普通の中学2年生の顔になった。
あ……同じなんだ
彼女も私も同じなんだって
親近感が急上昇。
ひとつのイスに座って
妙に照れてる私と嬉しそうな杏珠
それを見て
もっと嬉しそうな顔をしてたのは
誰でもない
中原君だった。



