「あ……いいよ大丈夫……座ってていいよ」
声のトーンが上がってしまう
井原さんとの会話が緊張してるってバレたら恥ずかしい。
バレませんように。
「だって笹原さんの席だから」
「みんな座ってるから気にしないで」
うん。
みんな勝手に座って
私を見ても全然気にしないのに
井原さんって
イメージと違って真面目なんだね。
すると
そんな私たちの会話を聞いて
「それなら心愛ちゃん。僕と一緒に座ろう」
いきなり中原君はそう言い
座ってる自分のイスのスペースを半分空ける。
中原君の『心愛ちゃん』呼びに、朝から私の顔は熱くなり胸がチクチク痛くなった。
きっと実花の鋭い視線が突き刺さったんだ。
「ぜんぜん大丈夫ですから」
敬語づかいで逃げ場を探していたら
「私と半分座ろう」って、井原さんに言われた。
いつもなら
きっと私はコソコソ理由をつけて、その場から逃げ出すだろう。
そんな私とは別世界の人達と一緒になるなんて、ありえないから。
でも……井原さんにそう言われ
彼女を近くで見たくて
話をしたくて
私はフラフラとカバンを持って自分の席に行き、井原さんと一緒にイスに座った。



