「でも私より大きいよ。私は148だもん」
「心愛との差が12センチしかない」
「12センチってすんごく大きいよ。平子君も私もきっと急にぐぃーんと大きくなるよ」
「うん」
「だから問題ないよ」
お母さんに言われた言葉を、そのまま強く平子君に言う私。
自分に言い聞かせるような
魔法の呪文みたい。
平子君は私の強い言葉に一瞬ひるんでから、すぐ笑顔に戻り「そうだな」って元気になる。
「それならいいか。心愛より大きければ……それでいいか」
「私だって大きくなるよ」
「いや、そーゆー意味じゃなくてさ、彼女より彼氏の方が……」
歯切れを急に悪くして
何やら平子君が言おうとした時
「平子せんぱーい。ミーティング始まりますよー」
「サボらないで下さい」
中庭に続く扉から
ジャージを着た一年生の女の子が大きな声を出し、平子君の言葉は最後まで伝わらなかった。
「今行くから!」
めんどくさそうに平子君が返事をしても
「ここで待ってます」
「早くして下さい」って2人は動かず、私達をジッと見ていた。
きっと
彼女達が新しく入ったマネージャーなんだろう。



