接点のない人気者の平子君に急にどっちって言われても、頭がグルグルして回らない。
それでも私の返事をワンコ顔でジッと待ってるので「どっちでもいいよ」と小さな声でそう言ったら、平子君は嬉しそうな顔になる。すぐ顔に出るタイプなんだね。
「それなら、心愛でいい?可愛い名前だなぁって思ったから」って私に言うので、私は「うん」って返事した。
それから少しふたりで話をした。
話をするというか
ほぼ一方的に平子君が話をしていた。
平子君は話が上手で明るく楽しい
時に動きを入れて
一生懸命私に笑える話を伝えてくれて
私が笑うと
それ以上に自分も笑う。
親しみやすくて話しやすい。
そこから
友達の話になってから
身長の話になると
平子君のテンションがちょっと下がる。
「でも俺、背が低いからさ……って、伊田と中原がデカいのが悪い」
「伊田君は大きいね」
「奴はバレー部の壁だから。俺……160だもん」
タメ息と共につぶやく三桁の数字。
初めて見るような平子君の暗い表情。
明るくて友達も多くて
悩みなんてないような平子君にもコンプレックスはあるんだ。
悩みは誰にでもあるのかな
ふと
完璧な美しさを持つ井原さんを思い浮かべる私。
そして
さっき見た
井原さんと中原君の怖い表情も追加で浮かぶ。



