その私の変な声に逆に驚き
一歩引いたのは平子君だった。
「そんな大きな声も出るんだ」
驚いてから感心され
平子君は私の隣に普通に座る。
縁のない人気男子とのツーショットに身構える私。他にも中庭に繋がる扉はあるから、私の見てない方向から来たのだろう。中原君と井原さんの2人に集中して気付かなかった。
「何してたの?」
「えっと……練習」
「サックスないじゃん」
「うん……基礎練習だから」
変に緊張して上手く説明できないのに、平子君は「へぇーっ」って感心しながら私のマウスピースを覗く。
「サックスって金管じゃないの?」
「木管楽器だよ」
「なんで?金色なのに?」
どんぐりみたいな大きな目がもっと大きくなる。
平子君の顔ってリスみたい。
緊張が解けてクスッと笑うと
平子君は「笑うな」って今度はムッとする。
身長はそんなに高くないけど
明るくて顔立ちがはっきりしていて
面白い平子君は目立って人気者だった。



